19鉄工課月の半分を浜で過ごすホタテ耳吊りの最盛期ホタテ養殖では、ホタテの「耳」 と呼ばれる箇所に穴をあけ、返しのついたピンなどでロープに直接取り付けて海に吊す。この一連の作業を「耳吊り」という。ホタテの耳吊りは年に2回。岩手県南部の人たちは、春吊り。石巻方面は秋吊り。年中通してアサヤの鉄工課にはホタテ関連の仕事が入ってくる。「いまの時期(12月)だと、石巻方面でホタテの耳吊りをしている最中。ホタテの耳吊機や穴あけの機械の修理が多い。あとは、ホタテを掃除する機械、選別する機械などもある。秋吊りのお客さんだと、5月・6月から修理をはじめて、大体9月あたりに作業が完了するかな。」この道30年になるベテランの馬場は、ホタテ関連の機械を担当することが多い。年間でホタテ関連だけでも40〜50台ほどの修理を行なう。「1台におおよそ2日半。耳吊機械だと3日くらい。他にもカキ用だったり、サンマ用だったり、いろんな機械を扱う。並行して、ラインホーラー(揚縄機)などの漁撈機械の整備・修理・点検。汎用旋盤から、溶接、整備。なんでもやるよ。」耳吊りの最盛期には現場の浜でお客さんに付きっきりになることもある。「先月(11月)は、月の半分くらい、現場に行ってたかな。あらゆる道具・部品を車に積んでさ。夜の11時から、次の日の夕方16時ぐらいまでぶっ通し。お客さんのとこに顔を出しながら、巡回する。ただ、機械がとまったり、故障しないかぎりは待機だし、仮眠もとる。まぁ、いざ寝ようとすると、車の窓をコンコンとされて、呼び出されるなんてのはしょっちゅうあるけど(笑)。」尾浦の現場にいて、牝鹿の方で機械が動かなくなったと連絡を受け、牝鹿半島まで1時間かけて移動したこともある。三陸仕様、お客さん仕様以前に対応したことのある機械はおおよそ2年周期でまたメンテナンスしていく。「同じお客さんの機械を何年もやっていると、好みがわかってくる。このお客さんは送りを速めにしとかないといけないとか。全部体が覚えている。」耳吊機の使い方や仕様はお客さんによってさまざま。それぞれ求めている使い勝手が違ってくる。「ホタテの耳に穴をあける位置は、お客さんによって求めるものが変わる。ちょうど1枚にあいてないとダメだというお客さんもいれば、2枚にするとピンがさしづらいから、1枚半にしてくれというお客さんもいるよ。」
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