23塗装課なめらかに削る。きれいに塗る塗装課では、船体の塗装を年間20艘程度担当する。夏が一番忙しくて、近海のマグロはえ縄船だけで夏に10艘は対応している。「かかったマグロを船上に引き揚げる舷門(げんもん)の部分はやっぱり一番痛むね。それから船底。船が古くなってくると、塗料の下に水ぶくれができて、痛んできちゃう。肌がだんだんと悪くなってくるから、サンドブラストで全面加工しなおす場合もあるよ。新造船だと塗料の厚みは250ミクロン〜300ミクロンくらい。毎年毎年塗り重ねていくとどんどん厚くなっていく。20年選手の船になると、厚さが5ミリになることもある。だんだん肌もボコボコしてくるのよ。」まず、元の塗装をサンダーがけして削っていくところから作業は始まる。「ただガリガリ削るんじゃなく、触ってガタッと段差ができないよう、とにかく平らになめらかにしていく。船底塗料ってすごい厚みがあるから、塗料と鉄板の段差が少しでもなくなるように削らなくちゃいけない。サンダーがけをやると、いろいろと粉がでるから、塗る面を掃除しながら作業を進める。入り組んだとことか、角とかは特に難しいね。そういうときはファイターっていう電動タガネの出番。でかいとこはスプレーで吹き付け。細かいところだけは刷毛で塗っていく。」季節・天候。造船場・船主の都合この仕事を左右するものが3つあると工場長の菅原は言う。「船主からの要望、造船場の都合、季節・天候。この3つを頭に入れながら、作業をしないといけない。船主からのオーダーはさまざま。全部塗ってくれというオーダーもあれば、ここの部分だけというのもある。難易度の高い仕事は、新造船かな。全国の船を造船しているから、廻航して戻っていっちゃう。その予定に必ず間に合わせないといけないからどうしてもタイトになる。新造船は半年くらいかかる。期間中は造船場で溶接屋さんがつくっていくんだけど、溶接するともう塗れなくなる箇所が出てくる。各工程で塗る作業が出てくるから、毎日付きっきり。10人いると、1現場に5人、2現場あると5人、5人でわかれて対応することができる。いま、うちで稼働しているのが6人。はやく新しい人たちに来てもらいたいね。※」あとは季節・天候。塗装屋は雨が降ったらお手上げだ。「スマートフォンの天気アプリを見ながら、ある程度予想して作業できるかを判断している。2日くらい雨とか降ると完全に中断だね。あとは、夏がね。大変。」新入社員の米倉は、入社してすぐに夏場の作業を体験した。想像以上の厳しさだった。「船底塗料が皮膚につくと焼ける。毛穴が開いたところに塗料がついたら真っ赤になってただれてしまう。ナイロンのヤッケで全身を覆い、手ぬぐいかぶって、メガネして、マスクして、あらゆるすき間をうめて、皮膚が露出しない状態にして作業します。地獄のように暑い。全身ペンキで汚れ、汗で汚れるので、1日に3回は着替えてました。大変だったけど、無我夢中でやれた。今となってはいい経験をしたと思います。いずれは工場長のように、きれいに仕上げられるようになりたいですね。」※インタビューは平成28年12月に実施。その後、平成29年4月〜6月に新たに4人の仲間が塗装課に加わりました。
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