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32漁業家のところへ足を運び聞き出したお困り事。その解決に向け、メーカーと一緒になって製品を開発する。現場との信頼関係を築いてきたアサヤならではのスタイルで、漁業家に喜ばれる、かゆいところに手が届く製品を開発・提供してきました。これまでにいくつもの製品開発に携わってきた弊社藤野からいくつかの機械にまつわる開発・導入エピソードをご紹介します。藤野茂康昭和46年アサヤ入社。現在、常務取締役。漁業の省力化・機械化の流れをいち早く感じとり、お客さんの仕事に貢献する数々の機械の開発・導入に携わってきた。カメラの腕前はプロ顔負け。この冊子に登場する写真の多くは彼が手がけたものである。ホタテ自動耳吊機いまからさかのぼること20年以上前、ホタテ養殖の世界に画期的な機械が誕生しました。それが自動耳吊機「イーグルロボ」。それまでもホタテの穴あけ機は存在していたのですが、ホタテに穴をあける人、ロープにピンを刺す人、ピンにホタテを吊るす人の3人の人手が必要でした。それらの作業が1人でできるようになったのです。昼夜を問わず対応した社員の懸命の努力によって、ホタテ養殖の省力化に貢献しましたね。三陸ではアサヤが独占的に販売してきました。漁業に関わる人の減少、高齢化という点から、省力化機械は必ず必要になるという考えが頭の中にあったんです。その後、改良版の「イーグルロボ2」が出ましたが、メーカーの都合により生産中止となりました。別の会社が新たに開発したのが「テック3」でした。紆余曲折はあったものの、この機械もアサヤで販売を任せてもらうことに。こういった省力化機械を漁家が積極的に導入していくことで、次世代の人材獲得にもプラスに働きますし、高齢化に向けた作業負担の軽減にもなると考えています。ワカメ塩漬け装置大型クラゲポンプ平成22年・23年ごろ、傘の直径が1mを超える大型クラゲが大発生。日本海に流れ、東北の方にまで押し寄せ、定置網に大量に入ってしまうという問題が起きました。エチゼンクラゲの毒に触れると魚の表面が白っぽくなり、売れなくなってしまいます。一度、イカと小さなエチゼンクラゲが入ったカゴから手袋をした状態でイカを取り出そうとしたときしぶきが頬に跳ねビリビリしたことがありました。定置網にクラゲばっかり入ってしまい、魚が入らなくなってしまうということで対策を考えることになりました。いろいろやってみましたが上手くいきませんでした。そんな時他県で油圧を利用した対策ポンプがあることを知り、メーカーと相談し油圧のポンプを使った装置をつくりました。水とクラゲを吸い込み、プロペラの間を通すことによってクラゲを破砕駆除し、定置網の外に出すというものでした。対策の最中に震災が起こってしまいましたが、震災後は水クラゲの駆除に一部の漁場で使用されました。アサヤ流漁師のお困り事を解決する機械のあれこれ水中ロボット定置網のお客さんに向けたサービスの一環として、30年前に水中ロボットを導入しました。漁場調査で、網がちゃんと張られているかなどを確認するために使います。魚が獲れない時に、網が切れていないかを確認したい。でも、いちいち海にダイバーが潜るのも大変。そういう時に、こいつの出番なんです。ダイバーの目視だと後から話を聞くしかないですが、水中ロボットだとカメラを通して直接見て判断することができるので重宝がられます。漁場調査をしていると、頭の中で描いていた網の張り方になっていないことに気付かされることも。そうした発見から対策を考えることもでき、お客さんのお役に立てる。私たちとしても、メーカーさんを巻き込みながら漁師さんとともに資材の開発を行ない、提案につなげていくこともできるため、アサヤらしい営業の流れをつくるのに一役買ってくれています。定置だけでなく、漁礁の調査など、他の分野でも活躍しています。砂糖がたっぷり入ったコーヒー。スプーンでコーヒーをかき混ぜれば、砂糖は溶ける。ならば、タンクの水を循環させればいけるんじゃないかとひらめいたのが始まりでした。どれだけの水量があればよいのか、また運転時間の長さはどれくらいがよいのか。いろいろと苦労しましたが、何とか完成にこぎつけ完成したのがこのシャワー式のワカメ塩漬装置です。塩をまぶしタンクに漬けたワカメを洗わずそのまま揚げることができるようになりました。さらに、ワカメの塩分濃度が一定になるため、品質も向上したんです。当時、多くの漁家で悩みのタネになっていたこともあり、大変喜ばれたのを覚えています。刈り取った「生ワカメ」を湯通しし塩漬けにして日持ちするように加工してできる「塩蔵ワカメ」。従来の塩漬けのやり方では、湯通しワカメを塩漬けに1日寝かし、翌日の朝、塩漬けしたワカメをタンクから引き揚げカゴに移す作業が待っているのですが、これが非常に重労働。お客さんから、なんとかならないか?と相談をいただいたのです。開発のヒントになったのは、

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