44三陸は世界有数の漁場。三陸の漁場で獲れた海産物が全国の消費者のもとに届く、という流れはこれからも続いていくはずです。一方で、課題は山積み。資源が減って魚が獲れない、魚の値段は下がったのに漁船の燃料代は高騰して利益が出ない、過疎化で子どもが減って跡継ぎがいない、などなど。アサヤとしては、こうした問題を解決し、漁業を続けていけるような手助けを行なっていく必要がある、と考えています。想定できる解決の糸口は4つ。1つ目は、漁業に関わる面倒事を担うこと。よりお客さんに密着し、うちが裏方役を果たしていくことで、お客さんが漁に集中できるようにする。2つ目は、機械化。人手が減っても、漁が続けられる方法を提案する。3つ目は、漁法革新。お客さんと一緒に実験しながら新しい漁のやり方を考える。4つ目が、漁業啓発。人手が足りないのは、漁業に興味を持つ人が少ないことも影響しています。漁業・漁師という生き方に触れてもらい、面白そうだと思ってもらう。進路の選択肢に漁業を組み込んでもらう。観光イベントの取り組みなどを通して、漁業に触れるきっかけをつくり、漁業を仕事に選ぶ人を増やしたいと考えています。現在、岩手大学の水産研究センターと協同で、ロボットを使った研究開発にも取り組んでいます。社員たちは日頃から現場に足繁く通っているので、現場のことはよく把握しています。つかんだ現場のニーズをメーカーの方と協力しながら新しい製品に結実させていく。ロボットの共同研究もそうした日々の取り組みから生まれたプロジェクトです。漁業現場のニーズとメーカーの技術を橋渡しする。その役割を果たし続けていきたい。2016年に始めた通販サイトも、漁業の課題を解決するための新しい試みのひとつ。気仙沼の特産品を全国に販売する通販サイトですが、いずれは漁師が直接全国の消費者に販売するための販路をつくる。そんなサイトに発展させたい。東京から気仙沼に戻ってきて、改めて感じたのは気仙沼の海の幸のおいしさ。このおいしさを全国に届ける。消費者にそのおいしさを味わってもらえれば、漁師にも還元されていくはず。流通量が増えることで気仙沼も元気になる。漁業のあり方も変わる。その取っ掛かりとして通販事業を位置づけています。世の中の変化はしっかりと捉える。でも、いたずらに成長を追い求めるのではない。「人々の役に立つ」というアサヤの創業理念を守り、漁業の変化そのものを支えていく。社員が楽しく生き生きと働ける環境をつくる。これからも200年、300年と永く続く会社にする。それが私のミッションだと考えています。profile専務取締役。早稲田大学理工学部を卒業後、大手ITコンサルティング会社へ就職。知人の起業に伴って経営に参画するなどさまざまな経験を積み、平成26年12月に帰郷。現在、アサヤの専務取締役。気仙沼復興のさまざまなプロジェクトにも参加している。廣野一誠専務取締役漁業のあり方を変えていく。それを支えるのもアサヤの役割だと思う。Issei Hirono
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