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5漁船部門カナリア諸島から発信されたSOSその時、船は大西洋にいた。メインの油圧機器にトラブルが起きていた。連絡を受けた西城が、船の状況を把握していく。ところが、油圧機器の図面がない。修理をするなら、すべての機械をストップしなくてはならない。話を聞き終えた時点で修理は不可能だとわかった。「部品を調達して、現地で付け替えよう。」西城の下した決断だった。メーカーにかけ合い、別の船で使う予定だった部品を急遽手配してもらった。あとは空輸で現地まで運ぶ。しかし、この間にも船は動いている。船は何日もかけて港に向かった。数日後、現地のメーカーによって取り付けが完了した。地球の裏側での出来事だった。信頼は、日々の積み重ねから船でトラブルが起きた時は、通常、現地の業者に連絡をする。ところが当時、千代丸の船長は真っ先にアサヤに連絡をしてきた。「漁船に同じものはない。すべてが一品物なんです。その船に関わってる会社にしかわからないことがある。アサヤさんは漁具屋だけど、漁具以外のこともよく知っている。何かあったら、とりあえず相談してみようと思える存在なんです。だから、大西洋にいた時もアサヤさんの名前がパッと思い浮かんだんじゃないかな。」千代丸を所有する山代水産の代表取締役・畠山さんは理由をそう語る。信頼関係は、日々の仕事の積み重ねから生まれる。「いつも漁具の仕立てとかで無理を言っちゃうんですけど、最後には必ずなんとかしてくれる。機械が故障した時の対応も早い。すごいですよ。特に、うちみたいに遠洋漁業をしてるところだと、港に着いてから次の出港まで2〜3日ぐらいしかないことが多い。漁に使う資材を届ける運搬船が今は3、4ヶ月に一度しか来ないから、発注するタイミングにも神経を使うはず。でも、そのあたりの調整もアサヤさんは抜かりなくやってくれる。西城さんも前に担当していた渡辺さんも、そこはきっちりしてる。おかげでいつも安心して、みんな漁に出かけられるのです。」西城が担当するマグロはえ縄船・新徳丸の船主である佐々木さんもアサヤを厚く信頼している。「アサヤさんは自分たちが頼んだもの、ほしいと思ったものを的確に持ってきてくれるんだよね。うちが特にこだわって発注しているのはナイロンテグス。最近は外国生産のものが増えたから、正直、アサヤさんより安く買えることがある。過去に一度だけ安いのを買ったことがあるんだけど、自分たちのところとは合わなくて。またアサヤさんから買うようになった。船頭ともよく話すんだけど、アサヤさんから買ったテグスにはこれだよねって感覚がある。乗組員もアサヤのがいいって言うんだから、間違いないよ。」

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